「かっこいいウェブサイト作ります」が「悪」であることを説く|ウェブ制作現場の問題点
ベルフォート株式会社 代表取締役社長
長尾 真介
「かっこいいウェブサイトさえできれば、たくさんのお問い合わせを発生させてくれる」このような誤解が、特に地方におけるウェブ制作市場では蔓延しているように感じます。
本記事では、私が経験したウェブ制作現場の裏事情をもとに、製造メーカー様が、ウェブサイト戦略でなかなか効果が出ないと嘆かれるその原因を解説いたします。
目次
製造メーカーがウェブサイト制作へ期待することとは?
製造メーカー様が制作会社にウェブサイトの制作を依頼する際、期待されることは何でしょうか。もちろん、
- ウェブサイトを通じて引き合いを獲得できるようにしたい
- 自社の認知を拡充させたい
- 優秀な人材を採用するためのプラットフォームを整えたい
といった目的が挙げられることは言うまでもありません。
「かっこいい見た目のウェブサイトを所有したい」といった補足的な要望はあるかもしれませんが、これが本来の目指すべき最終目的ではありません。ウェブサイトが美しく魅力的であることは重要ですが、「自社に利益もをもたらすため」、「業績を向上させるため」。その目的ために、多くの製造メーカー様は、ある程度まとまった予算をウェブサイトに投資されるのだと思います。
実際に体験したウェブ制作現場の潜在的な課題
私は会社設立以前、職務経歴の中で、10年以上ウェブ制作会社の現場でデザイン業務に従事していました。また設立後も、デザイン制作のみの代理店業務を行っていますが、その関係で、数社のウェブ制作会社様との繋がりもあります。
マーケティングの視点を持たない一部のウェブ制作会社
かっこいい見た目のウェブサイトを作る
私の経験上、多くのウェブサイト制作会社は、この方法でしかクライアントの期待に応えることが出来ていないと感じます。
代理店業務で、先日もこういう事例がありました。あるクライアントからの
ウチは営業職の強い会社だから、活気のある体育会系の人材に多く応募してもらえるような採用サイトを作ってほしい。
という要望に対し、
では、躍動感あるカラフルなイメージの参考サイトに習ってデザインしましょう!
との提案だったそうです。
問題は、人材採用に特化した集客チャネルの確保や、自社の新卒社員へのデプスインタビュー、ターゲット・市場調査などが一切行われず、見た目のデザインだけで、クライアントの要望を満たそうとしているのです。
もちろん、求人応募を検討するターゲットに好まれるデザインテイストの選定は重要ですが、戦略的なアプローチやマーケティングの視点を持ち込まないと、クライアントの期待に応える本質的なウェブサイトを完成させることは難しいでしょう。
クライアントの要望が個人の「美的感覚」に左右される問題
そもそも、ここで言う「デザイン」とは何でしょうか。
この文脈でのデザインとは、見た目やビジュアルを司るものであり、設計といった概念のデザインではなく、「装飾的なデザイン」の観点を指します。
多くのウェブ制作会社の現場では、「装飾的なデザイン」の良し悪しを軸として、制作が進行されてしまっているように思えます。では、その「良し悪し」の基準とはどこで判断されるのでしょう?
その答えは、関わる個々人の「主観的な美的感覚」です。
最も単純な例で例えると、「僕は青色が好み」「私はオレンジが好き」といった「個人の感覚的な好み」が、ウェブサイトの制作に大きく影響してしまっていると言っても過言ではありません。
感覚の押し付け合いで進む実際のウェブ制作現場の事例
私が経験した、実際のウェブ制作現場で見られる「装飾的なデザイン良し悪し」に関する進行の例を挙げてみます。
デザイナーやディレクターの間で、個人個人の感覚の押し付け合いが行われる…。
クライアントの課題解決とは全く違うベクトルで進められている…。
結局、お互いの主観的な感覚で進めてしまっているので、デザインを決めきれない…。そして最終的にはクライアントの判断にゆだねるという、「プロとしての提案」から逃避した方法を採ってしまう…。
クライアントの主観的な美的感覚が、いつしかゴールと定められ進んでいく…。
意思決定者が複数人になると自体は最悪で、複数人それぞれの「美的感覚」に沿った色替えやレイアウト替えのデザイン案を何点も用意することになる。最終的な合意が得られないまま、プロジェクトが停滞してしまうこともしばしば…。
ターゲットセグメントや調査、集客施策などの戦略的なアプローチがないがしろにされ、このような進め方で完成させたウェブサイトが、本来期待されていた効果を発揮することができるわけがありません。
いつしか「装飾ビジュアルの完成」がゴールに?
当然、クライアント側から「集客施策はどうするの?」「ターゲットのセグメント方法は?」など、専門的な指摘が入るはずもありません。そのため、「優秀な人材を採用したい」という願いをもとに依頼したウェブサイト制作は、知らず知らずのうちに、クライアントの個人的な美的感覚に合わせた「装飾ビジュアルの完成」をゴールとして挿げ替えられ、進行してしまう…。
そして、最終的にクライアントから「このデザインでOK」との確認を得て納品されると、ウェブ制作会社の職務は終わっていきます…。
で、このサイトで優秀な人材は、応募してきてくれるんだっけ?…
「かっこいいウェブサイト」がもたらす誤解と幻想
かっこいいウェブサイトができれば、たくさんのお問い合わせを発生させてくれる
それは全くの幻想です。
とりわけ、特に地方におけるウェブ制作市場では、このような誤解が蔓延しているように感じます。
この誤解の背後には、「装飾的なデザイン」だけに依存し、クライアントの期待に応えようとしてきたウェブ制作現場の姿勢が影響しているのかもしれません。
しかし、現代のウェブ戦略においては、サイト制作においてロジカルな戦略やマーケティングの視点を持ち込まないと、ウェブサイトからの持続的な効果は得られません。単なる見た目だけでなく、ユーザーの行動やビジネス目標に合致したコンテンツと機能を組み合わせ、戦略的なアプローチが求められています。
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ベルフォート株式会社はその実現をミッションに、これから出逢う一人でも多くの方々に、ウェブの可能性をお伝えしたいと思っています。
このコンテンツの著者
長尾 真介
ベルフォート株式会社 代表取締役社長
2004年、グラフィックデザイナーとして広告代理店に就職。2007年よりウェブデザイナーに転職し、以降ウェブとグラフィック両方のデザイン実務経験を積む。
2012年にウェブ解析士、2013年に上級ウェブ解析士の資格を取得したことで、ウェブマーケティングの業務に傾倒。マーケティング提案からウェブサイト企画、デザインまで一貫したディレクションを担う。
2016年、プラスチック成形メーカーの金型部門で、ブロー成形金型の設計に転職。主に自動車のガソリンタンク型を担当し、設計業務だけにとどまらず、最終的にチームリーダーとしてプロジェクト全体のディレクションまでを担当。
2019年9月に独立・創業し、製造業界をターゲットにしたウェブマーケティングサービスをスタート。2年後の2021年10月に法人化し、現在に至る。
【保有資格】
(一社)ウェブ解析士協会認定「上級ウェブ解析士」
(一社)全日本SEO協会認定「認定SEOコンサルタント」
(一社)ウェブ広告協会認定「ウェブ広告エキスパート Silver」
(一社)ウェブ解析士協会認定「初級SNSマネージャー」