部品加工ソリューションサイトの失敗から学ぶ、ウェブマーケティングに重要なこと
ベルフォート株式会社 代表取締役社長
長尾 真介
現代、多くの製造メーカー様は、新たな新規顧客獲得のチャネルとしてウェブサイトを活用しています。しかしながら、思ったような成果を得ることは容易ではないでしょう。
この記事では、特に金型メーカーをターゲットにした「金属部品加工」事業のウェブマーケティングに焦点をあてて、成果が出ない原因を、私の金型製造現場での実務経験を踏まえて解説したいと思います。
目次
部品加工ソリューションサイトの成果が芳しくなかった原因とは?
現在、弊社がサポートしている製造メーカー様は、以前、大手コンサル会社のプロデュースで部品加工事業を展開しており、主にウェブサイトを中心とした新規顧客獲得の施策を行っていました。そのウェブサイトは、コンテンツの内容も十分で、ページ数も多く、テキスト量や写真の充実度も見受けられ、粗悪な印象は全くありません。
また、「高精細加工が得意」「最新の三次元測定機で品質保障」といった加工品質の高さを訴求ポイントとしており、当時は広告集客も行い、一定のアクセスボリュームも確保できていたようです。
しかしながら、引き合いは非常に成績が芳しくなく、年間通しても、満足できる成約はわずか1~2件程度。これらの受注もサイト経由ではなく、展示会などがきっかけだったとうかがっています。
ウェブマーケティングの観点から見て、いったいどの点に問題があったのでしょう。
発注側である金型メーカーのターゲットニーズを整理
では、金属部品加工の発注側である、金型設計を行っていた当時の私のニーズを整理してみます。
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金型には、例えばコアとキャビを合わせるガイドブロックや、エジェクターのガイドブッシュ、駒周りのスペーサーや細かいプレート類など、多種多様な加工部品が必要になります。金型によっては、一つの型で加工部品が100個以上必要な金型も存在します。
私は当時、ガソリンタンク用のブロー金型を設計していましたが、特に自動車のダクト類やタンク類は、自動車の製造工程において、製造がスタートする順番は最も最後の方に位置しています。
したがって、非常に短い工期内で金型を完成させる必要がありました。
金型メーカー側の要求は、圧倒的に「納期の速さ」
このような状況から、自社内のリソースだけでは対応が難しく、部品加工を手伝ってくれる外注先は何社も必要でした。
その結果、金型製作側のニーズとしては、加工メーカー側に対しては圧倒的に「納期の速さ」を要求していました。精度や品質も必須であることは言うまでもありませんが、その点はこちらが提示した図面通りに加工してもらえれば十分で、そのための要求精度は、図面内の交差数値や細かい指示を明示しているわけですから。
芳しくなかった原因は、ターゲットに対する訴求ポイントがズレていた?
この金型製造側の「納期の速さニーズ」は、きっと当時の私限定のお話ではないと思います。少なくとも自動車部品関連の金型製造をされている方には、共感いただける部分も多いはずです。
話を戻しますが、ある程度充実したコンテンツを持っていたサイトが、なかなかの閑古鳥状態だった原因は、つまり市場のニーズに対して、訴求しているポイントが大きくズレていたのです。多くの部品加工発注側は、「スピード」「短納期」が最優先なのに、「高精度な加工ならお任せください」という迎え方では、なかなか引き合い獲得に至ることはできなかったのでしょう。
訴求する情報は具体的であるべき理由
ここからはウェブディレクション的な見地からの意見ですが、さらに重要なのは、「短納期です」という訴求をする場合、「どの程度短いのか?」を数字で訴求すべきです。
例えば、見積もり依頼の段階なら
図面データをもらってから24時間以内に提出します。
複雑な仕様なら、最長でも2営業日以内には返答します。
といったイメージです。
実際の部品加工納期に関しては、いくつか代表的な加工案件の実績を提示し、「この程度の加工要件の部品を○○点発注の場合は、約2週間程度で収めました」といった概算程度でも良いでしょう。
参考サイト:株式会社テルミック様
https://tel-mic.com/
トップページにて、見積もりの最短が「45分」と記載され、発注側でのスケジュールイメージに組み込みやすいと感じます。ターゲットのニーズをよく汲み取った訴求性を感じます。私が当時このサイトを知っていたら、おそらく見積もり依頼は検討していたと思います。
部品加工を発注する側は、差し迫ったスケジュールで動いています。上記のように、サイトに提示された見積もりや納期の日数が、ある程度自身のスケジュールになじみそうだと判断すれば、発注の依頼を前向きに検討してくれる可能性は上がってくるでしょう。
ウェブマーケティングではターゲットの課題に対する「答え」の提示が重要
今回ご紹介したのは、製造業界の中でも特に限定的な範囲内のお話ですが、重要なのは、どんな事業やサービスであっても、それを購入してくれるターゲットユーザーを深く理解することです。
どれほど自社が優れた設備や技術を有していたとしても、ウェブサイト上でターゲットのニーズや課題に対する適切な「答え」を提示できていなければ、それはミスマッチとなります。ターゲットの心を動かすことはできません。
繰り返しになりますが、まずはターゲットを深く研究し、知ること。そのうえで、自社のウェブサイト戦略を構築するべきでしょう。
ウェブサイトの効果でお悩みの製造メーカー経営者様へ
ウェブサイトの効果でお悩みの経営者様、ベルフォート株式会社までお気軽にお問い合わせください。
弊社は、代表による金型設計の実務経験と、特に樹脂成形・金型製作・自動機/省人化装置の製造現場で得た経験や知識を、サービスに組み込んでおります。そして実際に、製造メーカーのお客様にて、ウェブサイトの制作から運用までの成功実績もございます。
また、下記リンク先の弊社公式ウェブサイトでは、弊社にいただくお問い合わせの中でも、特によくある質問もご用意しています。お役立ちいただければ幸いです。
このコンテンツの著者
長尾 真介
ベルフォート株式会社 代表取締役社長
2004年、グラフィックデザイナーとして広告代理店に就職。2007年よりウェブデザイナーに転職し、以降ウェブとグラフィック両方のデザイン実務経験を積む。
2012年にウェブ解析士、2013年に上級ウェブ解析士の資格を取得したことで、ウェブマーケティングの業務に傾倒。マーケティング提案からウェブサイト企画、デザインまで一貫したディレクションを担う。
2016年、プラスチック成形メーカーの金型部門で、ブロー成形金型の設計に転職。主に自動車のガソリンタンク型を担当し、設計業務だけにとどまらず、最終的にチームリーダーとしてプロジェクト全体のディレクションまでを担当。
2019年9月に独立・創業し、製造業界をターゲットにしたウェブマーケティングサービスをスタート。2年後の2021年10月に法人化し、現在に至る。
【保有資格】
(一社)ウェブ解析士協会認定「上級ウェブ解析士」
(一社)全日本SEO協会認定「認定SEOコンサルタント」
(一社)ウェブ広告協会認定「ウェブ広告エキスパート Silver」
(一社)ウェブ解析士協会認定「初級SNSマネージャー」