製造メーカーが採用すべきウェブ広告戦略|ターゲット別で施策を練る
ベルフォート株式会社 代表取締役社長
長尾 真介
本記事では、製造メーカー様のウェブ広告運用における手法の選択やその効果について、実例を通じて解説しています。
まずは検索広告とディスプレイ広告の特徴を知ること。そして同じ商材であっても、例えば「試作・小ロット」ニーズと「量産」ニーズでは、ターゲットの性質がまるで違うことを認識して、広告の戦略を検討しましょう。
目次
検索広告でリーチできるターゲットの限界
製造メーカー様が、GoogleやYahoo!などのウェブ広告を運用する際、どの様な広告手法をセレクトされるでしょうか。
私が、あるプラスチック製品の製造メーカー様のウェブコンサルをスタートする際、すでに別の大手コンサル会社様が、マーケティングサポートに入っていました。ウェブ広告の戦略を検討する際、私は検索広告にプラスし、Display広告の併用も進言しましたが、「Displayはばら撒き広告なので、結果が出ない」と、検索広告一辺倒のお考えのようでした。
確かに「引き合いを獲得する」には、検索広告の方が圧倒的に結果は出やすいでしょう。言うなれば、「今すぐほしい」「早く課題解決したい」と、ニーズや課題が顕在化したうえで検索してくるターゲットを、刈り取る広告手法なので。
しかし、言い方を変えると「ニーズが顕在化し、検索して探す」という行動をとるターゲットだけしか、サイトに連れてこれないのも事実です。つまり、サイト集客できるボリューム数としては限定的と言えます。
コンサルの立場からすると、ウェブ広告をあまりよく知らないクライアントには、結果が出やすい検索広告にこだわった方が、自社の信用にもつながるから、という気持ちも分からなくはありませんが…。
検索とディスプレイの両広告でフルファネルなターゲットを獲得
ディスプレイ広告は、「検索」という行動をとる人物以外のターゲットにもアプローチできる広告です。下図のファネルにもあるように、「認知拡大」「興味関心あり」「検討段階」全ての状態のターゲットにアプローチ出来ます。
検索広告よりもクリック単価が低く、同じ広告予算内であれば、圧倒的に多くのクリック数を集めることができます。ただし、課題がまだ顕在化していないユーザーをサイトに誘導するため、検索広告と比較すると、コンバージョン率はかなり落ちます。
検索広告とディスプレイ広告のメリット・デメリット
検索広告とディスプレイ広告のメリット・デメリットを簡単に以下の表にまとめました。
検索広告 | ディスプレイ広告 |
---|---|
クリック単価が高い | クリック単価が安い |
集客できるアクセス数は少ない | 多くのアクセス数を集客できる |
コンバージョン率は高い | コンバージョン率は低い |
課題が顕在化しているターゲットを引き合いに繋げる | 認知拡大を主要な目的とする場合が多い |
つまり、こういう考え方ができます。
検索広告は、顕在層を集客し、短期的なスパンで引き合いに繋げる広告。
ディスプレイ広告は、潜在層を集客し、長期的なスパンで引き合いまで育て上げる広告。
製造メーカーでの検索広告による引き合い状況
プラスチック製品の成形ニーズに焦点を当て、検討を進めてみたいと思います。
弊社のクライアント様の、射出成形サービスに関する広告施策において、引き合い獲得の結果が明らかになりました。
主に射出成形をテーマにしたサイトへの集客広告を試みましたが、注目すべきは、「試作、小ロット、開発」案件が大半を占め、「量産」案件が全体の1割にも満たないことです。
この結果から見て取れるのは、試作・小ロットニーズは、検索広告で引き合いを獲得しやすい一方で、射出成形の量産ニーズは、検索では獲得が難しい可能性があると言えそうです。これはなぜでしょうか?
試作・小ロットターゲットと量産ターゲットの違い
試作や小ロットで、製品成形を求めるターゲット像とは、例えば
- 新作の成形品を、取り急ぎ小ロット30個成形してくれるメーカーを探したい
- 新作の製品の試作を、最もコスパの良い成形工法で作ってくれるメーカーを探したい
など、ある程度緊急性を求めているユーザーが多いと思われます。
それに対し、金型を必要とする量産成形ニーズはどうでしょうか。
そもそも、金型や成形は仕様が複雑なため、既存の顧客が簡単に他社に移行することは難しいでしょう。
また、緊急な成形移管などのケースは別として、「再来年スタートする自動車の新型部品は大型のため、新しい成形メーカーを検討してもいいかも」など、試作・小ロットとは違い、緊急性に欠ける場合が多いのではないでしょうか。
すなわち、「検索して探す」という行動には繋がりにくいでしょう。
広告施策はターゲット別で考える
製造業において、効果的なウェブ広告を運用するには、ターゲットを明確にセグメント分けし、それぞれに沿った広告戦略を別々で練るべきです。上記の例でも分かる通り、同じプラスチック製品の成形でも、「試作・小ロット」と「量産」では、ターゲットの性質がまるで違います。
検索広告では接触しにくい量産ターゲットには、まずはディスプレイ広告での認知拡大です。そしてマイクロコンバージョンをKPIにした施策や、ホワイトペーパーのダウンロードでリストを獲得するなど、長期スパンでのナーチャリングが必要となってきます。
ウェブ集客でお悩みの製造メーカー経営者様へ
弊社は、製造メーカー様とのウェブマーケティングを通じて、お客様との緊密な連携の重要性を痛感しています。
お客様と共に競合を調査し、ターゲットを深く研究し、そして自社の強みを引き出す。これらのステップを踏まない限り、本当に効果的な施策を実現することは難しいのだと学びました。この経験を活かし、今後も製造メーカー様を中心に、事業を拡大させられる働きをしていきたいと思います。
このコンテンツの著者
長尾 真介
ベルフォート株式会社 代表取締役社長
2004年、グラフィックデザイナーとして広告代理店に就職。2007年よりウェブデザイナーに転職し、以降ウェブとグラフィック両方のデザイン実務経験を積む。
2012年にウェブ解析士、2013年に上級ウェブ解析士の資格を取得したことで、ウェブマーケティングの業務に傾倒。マーケティング提案からウェブサイト企画、デザインまで一貫したディレクションを担う。
2016年、プラスチック成形メーカーの金型部門で、ブロー成形金型の設計に転職。主に自動車のガソリンタンク型を担当し、設計業務だけにとどまらず、最終的にチームリーダーとしてプロジェクト全体のディレクションまでを担当。
2019年9月に独立・創業し、製造業界をターゲットにしたウェブマーケティングサービスをスタート。2年後の2021年10月に法人化し、現在に至る。
【保有資格】
(一社)ウェブ解析士協会認定「上級ウェブ解析士」
(一社)全日本SEO協会認定「認定SEOコンサルタント」
(一社)ウェブ広告協会認定「ウェブ広告エキスパート Silver」
(一社)ウェブ解析士協会認定「初級SNSマネージャー」